Prologue-2
待合室で待つこと一時間。
最初にリーディアを案内してくれた青年がやってきた。
「リーディア様。こちらをどうぞ。面接場所が記してありますので、そちらに向かってください」
無表情な彼は、薄い封筒をリーディアに手渡した。
「あの、」
「はい、なんでしょう」
「仕事の詳細を用意するって……」
あの胡散臭い男が言っていた。だが、これはどう見ても詳細が入っているとは思えない。それもあの話しぶりからして長期の仕事。手触りの感じからして一枚しか入っていない。仕事の詳細をこの一枚にまとめられるのだろうか。
「ええ、それでしたら面接時にお話しするという連絡が先ほど届きましたので」
「そう、でしたか」
高収入という言葉に釣られてしまったが、いまさらになって不安になってきた。
とりあえず、ありがとうと礼を言う。
「いいえ、それではまたの機会をお待ちしております」
青年に見送られてカールバンクから出ると、封筒を開けた。
中には思ったとおり一枚しか入っておらず、なんともいえない気持ちになる。
(背に腹はかえられないから来たのよ。それで最新の、それも高収入で成功すれば名声も上がるってすっごくいい条件のものを紹介してもらえたんだもの)
これを逃す手はない。
えいっと思い切って取り出して、書類を見る。
『リーディア・エル・アプロイツェル殿
この度は当仕事案内所をご利用いただき誠にありがとうございます。
つきましては、ご紹介する仕事の面接場所および時間が決まりましたのでその御連絡です。
仕事内容につきましては、面接に合格いたしました後に先方様よりお話をいただける手筈になっております。
場所:カルアディア帝国、帝都ローディアス、アリンアシア城
日時:本日の夕方
依頼者:ルージュ・ロア・レイツォン
尚、到着の際は門番に『カールバンク』からの紹介されたとお伝えください。
御健闘をお祈りしております。
仕事案内所『カールバンク』 紹介担当 クロード・ロレンティ』
そう記されていた。
何度も目を凝らして見るが、書いてあることは変わらなかった。
(やっぱり受けるんじゃなかったかも)
気になる点が多すぎである。
まず一つに場所、それから依頼者。
高収入はその分リスクが大きい。
「行くしか、ないけど……」
受けると言ってしまった手前、断ることはできない。
依頼者が想像通りなら、不敬罪に問われて投獄されるか“魔女”の称号を剥奪されかねない。
「帝都までは時間がかかるし、帝都行きの馬車を見つけないと」
これ以上考えることをやめにして、てくてくと肩を落としながら歩き出した。